ジュニア探偵小説 謎の暗号 森下雨村 注文 偕成社

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昭和29年・版数不記・290頁
カバー(※本体から独立)貸本仕様(見開き・小口に貸本店印、見開きに貸出票はがし跡)途中頁の一ヶ所に書き込み
途中頁の一ヶ所に下角ヤブレ欠け(ただし欠け具合から察するに、これは製本時からのものと思われます)ヤケ・シミ・イタミ

※同作者による講談社版『謎の暗号』とは、まったく別内容の同題異話です。
※敵役の怪盗団の秘密のアジトというのが、なかなかのケッサクと言える代物で、これほどに大規模な隠れ家が人知れず東京のど真ん中に存在しうるということが、まず特筆すべき一つのアイデアです。それは『偕成社ジュニア探偵小説資料集』(盛林堂ミステリアス文庫)内において森英俊氏が「終戦直後の東京の風景描写が興味深い」と述べていることとも密接に関わっているのですが、「戦争の忘れ形見」とも言うべき「ソレ」を隠れ家にしていること自体が、すなわち敵の正体にもちゃんと結び付いています。このように作品世界をきっちり構築した上で物語を紡ぎ上げていくところに、同時代の他作家のジュブナイルにありがちな「いい加減さ」とは明らかに一線を画している著者・雨村の「たとえ子供の読み物であろうと決して手を抜かない」といった執筆姿勢が窺えるところです。
※この昭和29年以降の版にのみ収録の併録作『怪魔島』は、紙数制限のために駆け足な筆致となったのが惜しまれるくらいに、「Uボートが欧州の戦火を逃れて秘かに四国沖まで運んできた財宝の行方」や「現代の海賊の暗躍」といったワクドキ要素満載な1篇です。

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